仙台スタジアムごみ減量大作戦!シンポジウム
〜全国に広がる仙台方式のすべて〜
日時: 2004年2月29日(日)
主催:財団法人みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)
共催:ベガルタ仙台・ボランティア・ネットワーク(VVN)
株式会社 東北ハンドレッド(ベガルタ仙台)
仙台市
☆開会挨拶(小澤氏)
☆03シーズンの活動報告と成果(MELON門田氏・三浦氏)
○動機
2002シーズン終盤、ごみ問題が深刻化
ごみの「かさ」を減らすことに注目→2003シーズンのごみ減量作戦出発点
ごみ袋(一枚約185円)排出量削減により、ごみの量と経費が削減できると考えた
○シーズン開始時の調査
3/15 ナビスコカップ柏戦でまずカウント開始
当時は分別も徹底されてなく、観客は調達してきたものをスタジアムで捨て、帰りは
手ぶらという状況だった→ボランティアの労力でも処理が追いつかない
ボランティア・スタッフの弁当も分別できず
○作戦開始・各種作戦内容
・ごみ排出量徹底調査!大作戦
3/15開始(結果は後述)
・ボランティア弁当分別回収!大作戦
ボランティアスタッフ用の弁当を内容物に応じて6種類に分別→かさが5分の1に
後にボランティアスタッフが自主的に分別するようになった
ボランティア・警備員、そして9月からは本部の弁当も分別
↓
・スタッフ弁当の生ごみ堆肥化!大作戦
MELONスタッフの畑にて、生ゴミを堆肥として使用
分別・堆肥化を進めることにより、弁当の内容にも変質が
→アルミホイルなどの無駄なものが減り、容器にもフィルムが付き分別しやすくなる
メーカー側の意識の変化(ただし、業者4社中容器が変わったのは1社、今後に期待)
・ごみ袋の貼り方・並べ方徹底大作戦
燃やせるごみ用の袋を手前に置くとそこに一緒くたに捨てられてしまうという
→ペットボトル用の袋を手前に、内容別に袋を並べて貼る
各ゲートに張り紙をつける(ワケル君の協力を得る)
・コップ分別回収!大作戦
かさばるごみの代表であるコップを重ねて回収し、かさを減らすことからスタート
一試合8000個出たものを50個単位で重ねる
バラバラだと一袋あたり100個しか入らないが、重ねれば一袋700個入る→袋削減へ
ただし、スタジアムで排出されるコップは何種類もあり全部重ねることはできない
・仙スタごみ減量ニュース大作戦
活動の内容紹介・進捗状況を広報
・仙台市環境社会実験に応募
採用、これで得た予算をもとにボードなどを作って活動を紹介・呼びかける
・マイタンブラー大作戦
6種類のタンブラーが13300個売れる
一試合あたり8000個あったコップのごみが5000個くらいに減少
・横断幕de広報大作戦
環境社会実験の予算を投入して4種類作成、チアリーダーとともに広報
・紙資源リサイクル大作戦
紙コップのリサイクルルートを作る
コーティングの関係で、静岡の業者に頼んでリサイクルしてもらう
コップ・段ボールなどの紙約340キログラムを資源化
○成果
・ごみ袋の数の変化
燃やせるごみ 6192袋
ペットボトル・ビン・カン 1186袋
計 7378袋
一袋約185円として計算すると、総処理費用は1364930円
去年(約179万円)より減少
・コップ
77815個、うちリサイクルされたものはは9050個
・観客1000人あたりのごみ袋数(試合日によって観客数が変わるため)
当初31.7袋→最低19.7袋まで減少
要因としてはタンブラー販売など。
ただしペットボトルによる試供品提供があったときや、新規で活動をまだ知らない観客が多いときなどは数が上がる
・目に見えない成果
MELONボランティアの存在
大学の研究テーマに採用
新聞・TVによるバックアップ(MMT盛アナウンサーの特集など)で、活動の存在を広く知ってもらった
元気大賞2003(幕張)にて表彰
Jリーグ本部での事例発表
→人と人とのつながり
○問題点
・タンブラーの利用範囲がまだ狭い
チームの主催試合でしか使えないという問題
ケチャップが付いている場合、紙コップリサイクルはできない→売店の協力が必要
・生ごみの行方
・行政との関係−市民主体で動いてきたものに対する行政の関わり方の模索
・ごみをもとから減らすという継続的なシステム作り
○仙台方式とは?
・サッカーの試合で、スタジアムで出るごみの減量への取り組み自体が全国的に初めて
・サッカーと無関係だった環境NGOが新しく参加したことの意義
・本格的な調査(例:ごみ袋の内容物調査)
・スタジアムという場所そのものが環境学習の場となったこと
→20000人の観客だけでなく、そこから更に多くの人の日常生活に広がっていく効果
・そして、たくさんの人々・チーム・市の力がつながったこと
→新潟・甲府でもこの方式を取り入れようとする動き
○ベガルタ仙台エコプロジェクト(予定)
・ベガルタ仙台☆マイバッグ大作戦
・ベガルタ仙台☆ごみワケル隊
・ベガルタ仙台☆オリジナルタンブラー
・ベガルタ仙台☆クリーン横断幕
○まとめ
・MELON・VVNともにとまどいながらシステムを模索してきたが、そうやってもがいてきたことそれ自体が大きな意味を持つ出来事
・ホームタウンという概念のもと、地域とスポーツの結びつき同様、スタジアムを通して出会った人々が新しい展開を見せてくれることを期待
☆ベガルタチアリーダー応援パフォーマンス
(チアリーダー挨拶より)
昨シーズンは横断幕などで一緒に活動に参加できた。
今後ともチアリーダーはこの活動により深く関わっていきたい。
例:ジュニアメンバーに「お姉さん」として活動内容を説明していく、など。
☆選手からのビデオメッセージ
・千葉直樹選手
地元仙台で育った選手として、仙台スタジアムを日本一のスタジアムにしたい。
ごみ減量大作戦から生まれたタンブラーのような取り組みが広がっていくことを
願っている。
・小針清充選手
全国でも例を見ない運動だと聞いている。今後ともチャレンジしていってほしい。
☆サイン入りタンブラー大抽選会
(休憩)
☆パネルディスカッション〜全国に拡がれ!仙台方式〜
パネリスト
・名川良隆氏(株式会社東北ハンドレッド代表取締役社長)
・細井実氏(仙台市環境局環境部長)
・泉田和雄氏(ベガルタ仙台・ボランティア・ネットワーク事務局長)
・盛朋子氏(株式会社宮城テレビ放送アナウンサー)
・遠藤由吏氏・木村真理子氏(東北学院大学3年生)
コーディネーター
・小澤義春氏(仙台スタジアムごみ減量大作戦!プロジェクトリーダー)
※以下敬称略
(挨拶略)
小澤氏:活動の振り返りと、全国への広がりについて。
泉田氏:ごみ問題はJリーグ全チーム共通の問題だったから、全国から注目されたのでは。各チームボランティアスタッフはチームからの委託のもと取り組んできたが、仙台はMELONなどとの連携によって一歩進めて取り組むことができた。更に昨年9月のホームタウンサミットでも各チームに活動報告し話題となった。12月にはJリーグから要請され報告したが、その際に他チームから、ボランティアとクラブとの連携に関して難しいという質問があって驚いた。私は両者が協力して当たり前と思っている。2006年W杯のテーマが環境保護(グリーンゴール計画)であることでも分かるように、今後ますますサッカーの場において環境に対する活動が広がっていくだろう。
小澤氏:この活動の話題をメディアで発信する側として、活動への思いなどを。
盛氏:実はこれまで、Jリーグを年間30-40試合見てきた。その大好きなサッカーと環境が関わる問題としてこの活動を見てきた。MELONの門田さんからの「マスコミはおいしいところ一回だけしかこういう活動は取材しないのでは?」という言葉に反省したのがきっかけ。テレビは「絵になること」を追いかけがちだということを再認識し、継続取材を決意。「導入、NGOとボランティア、他のスタジアム、ファーストステージのまとめ、ホームタウンサミット」での報告と5回シリーズの予定だったが最終的に9回になった。TVでもとらえやすい「絵」でも活動内容を訴えられるよう(例:コップをわかりやすく重ねるなど)協力してもらえた。それに乗せられたかたち。タンブラー発売が実現したこと、完売したこと、継続して使ってもらったこと、そして紙コップもリサイクルすることといった一連の動きは特にそう感じた。甲府のリユース食器フォーラムでも注目された。リユースカップには保健所の許可が下りにくいなどの問題があるが続けていくという。こうした活動は全国的な広がりを見せていることを実感した。
小澤:実際に参加して研究した側としての感想や展望を。
遠藤:自分たちはこの活動を「仙台スタジアムにおける生涯学習」としてとらえた。社会教育課題研究のテーマとして取り上げ、MELONとの出会いを通じてごみ減量作戦に参加。活動を通し、自主的な活動を通した工夫の繰り返し、他チームへのノウハウ提供を実感。ごみの量の変化から、観客の環境に対する意識の変化を感じる。
木村:様々な立場の人の協力から、相互協力の重要性を感じた。この運動は環境問題を意識する一つの機会と思う。賛否両論だった活動は、メディアなどによるアピールによって否定的な意見の減少を見た。仙台スタジアムは単なるスタジアムではなく、集まる人々が自然に学習できる場であると実感。感想としてはごみ分別に対する意識が変化し、日常に生かすきっかけと感じた。
小澤:行政の立場からは、どうとらえているか。
細井:生涯学習としてとらえてもらえると嬉しい。昨年7つの候補から環境社会実験の審査をしたとき、MELONとVVNのつながり、さらに観客とのつながりを重視。これは環境教育にもつながると感じた。この活動が20000人にどう訴えられるのかということを門田さんには聞いた。どうつながり、どう発信するのかということに注目したのは、環境問題の根本に関わることだと思ったから。100万の市民が自分の問題として環境問題をとらえるため、広がりを見せる活動であってほしいと思っていた。いろいろな立場の人が環境問題を通して情報・感覚の共有を通してつながることに期待した。現在環境パートナーシップの企画を進めているが、そのためにはいろいろな日常の活動から環境問題に関する情報を共有するネットワークができていくことが理想。
小澤:チームとしてのとらえ方は。
名川:不特定多数の集まる場所での事業ごみの扱いを考える上で、今回の活動の役割は大きい。啓蒙活動の要素も濃いから、多くの方の協力が得られた。全国的にも評価はいただけたが、ただ評価されるだけでなく仙台方式を取り入れて他のチームが活動してくれることになお感銘を受けた。サッカーにとどまらない、他のイベントでの展開も期待。チームとしても新フロントはボランティアの活動に協力していきたい。リターナブルや、ごみ持ち帰りに取り組みたい。家庭ごみに対するリサイクルの認識が、スタジアムのような場でも市民一人一人に定着していくように進めたい。
小澤:今シーズン、この活動に参加する人たちの輪に行政ももっと加わっていただきたい。行政側からはそれに対してはどう思うか。
細井:ごみの問題は根が深い。このごみ削減運動を、社会のシステムを変えるきっかけにしたい。20000人が試合のたびに経験するごみ対策を、100万人にどう生かしていくか。行政もこの運動に参加する主体として、ネットワーク作りに加わりたい。行政そのもののあり方も問われてくるだろう。行政そのものも主体的に関わるべく、環境問題に対して社会を動かすシステムを考えたい。行政と対等に議論できる場を設けていくことも必要と思う。
小澤:今後の活動は「人とのつながり」が重要なキーワードになるだろう。メディア側としての今シーズンの目標は。
盛:この活動は、最終的には仙台のシティセールスにもつながるのでは。どのような方向性をもっていくのか…環境問題は今注目を浴び、いろいろな可能性があるからこそ長く見守っていきたい。今は企業が景品としてタンブラーを配る時代。一般の意識も変わってきている。私も会社でマイタンブラーを使っているが、社内でも注目されることに関心の高まりを感じている。今シーズンの活動がどのような方向性になるかはまだ分からないが、自分はまた開幕から見守っていきたい。
小澤:今年の意気込みを。
遠藤:来期の活動がまだ見えない(J2降格などの要素があるので)が、活動には積極的に参加していきたい。
木村:ここで終わりではない。今年もMELONボランティアとして関わりたいし、ここでの活動を他のイベントにも生かしていけるようにしたい。
小澤:スタジアムボランティアでの活動は今年どうなるのか。
泉田:昨年末にスタジアムアンケートを行った。環境に関する質問も入れた。タンブラー所持者の47%が購入後スタジアムで使用しているという。初年度としてはいい結果だと思うが、今後更に高めていきたい。ゲーム後の清掃ボランティアに協力してくれるかどうか(いわれてではなく、自主的にやってくれるかどうか)も聞いてみたところ、39%が一緒にやってくれると回答してくれた。こういった意識を持つ方々ともっと取り組んでいけるようにしたい。
小澤:チームに対しても心強い発言があったと思うが、チームとしては。
名川:リターナブルとごみ持ち帰りの領域に特に力を入れたい。アメリカ先住民の教えによれば、「自分たちの生活している土地は先祖から与えられたものではない。これから生まれる子孫から預かっているものだ」とある。これこそ環境問題への取り組みを考える上で重要な考えなのでは。環境問題を増大させないことこそがまちづくりと考える。さらにこの活動を通して、ひとづくりも果たせる。
(質疑応答)
Q:東北福祉大の大学祭では非木材容器を利用してリサイクルに取り組んでいる。仙台スタジアムでのコップリサイクルは材質の都合上静岡に送っているというが、仙台でもそういったものを行えればシティセールスにつながるのではないだろうか。
盛:リサイクルよりもコストのかからないリユースを重視し、ごみを「出さない」「繰り返し使う」という方向性でシステムを作っていった方がいいと考える。
細井:本質的な問題だ。リサイクルはコスト同様技術も要する。ごみも「地産地消」が理想。地域で処理できる構造を作れるように目指していきたい。
小澤:生ゴミに関しては、七北田に共同コンポスターを設置できないかと考えている。
Q:実際に活動に参加したか。
名川:まだ積極的に参加したことは実感していない。
Q:できれば直接参加をお願いしたい。
名川:主催者という立場として(選手も含め)できるところに参加したい。
Q:持ち帰り作戦は徹底できるのだろうか?植え込みへのポイ捨てなどが懸念されるが。それでスタジアムやチームに苦情が来たら元も子もないので、スタジアムでの処理を重点的に推し進めていく方がいいように思う。市民のマナーも鑑みると、持ち帰り作戦は難しいところもあるのではないか。
名川:市民の義務として、「自分のごみは自分で処理する」という考えを持ってほしいと思っている。ポイ捨ての弊害に関しては実際の状況を見て判断、場合によっては作戦の修正もあり得る。
Q:売店の業者に対して統一規格は訴えられないか。
名川:個別に協力していただけるよう協賛をお願いしている。事前にこういった統一規格の問題に関する協力もお願いする。
小澤:「ごみの元を出さない」スタジアムになることを期待したい。まとめは今日参加された皆様それぞれが、それぞれの場でしてほしい。
☆閉会挨拶(伊藤VVN会長)